転居前に吉方位をサイトなどで調べたことがある方も多いでしょう。
しかし、実際に調べてみると、あるサイトでは吉方位とされているのに、別のサイトでは同じ方位が凶方位とされていることがあります。
このような場合、どちらが正しいのか疑問に思った方もいるでしょう。
本来、「ある時期のある方位」が吉方位か凶方位かの答えは一つのはずです。
しかし、実際には方位術の種類や流派によって、その判定が異なることがあります。なぜこのような違いが生じるのでしょうか。
それは、吉方位や凶方位の定義や計算方法が異なるためです。
ここでは、日本でよく使われている「九星気学」と「奇門遁甲」の各流派を例に、違いについて解説します。
なお、九星気学の「九星(きゅうせい)」と奇門遁甲の「九宮(きゅうきゅう)」は同じですが、ここではすべて「九宮」に統一して解説しますので、ご了承ください。
流派による方位判断の違い
ここでは、九星気学と吉凶判断方法が異なる奇門遁甲の3つの流派、合計4つの流派について、方位の吉凶判断がどのように異なるかを実例を交えて解説します。
例として、2023年(癸卯・四緑木星)の年盤を取り上げ、それぞれの流派で割り出した吉方位を下図に示します。
2023年 年盤
己 天心星 戊 杜門 九地 三碧木星 反吟 | 戊 天苪星 壬 景門 朱雀 八白土星 | 壬 天輔星 庚 死門 勾陳 一白水星 |
癸 天禽星 己 傷門 九天 二黒土星 | 乙 天柱星 乙 四緑木星 | 庚 天英星 丁 驚門 六合 六白金星 |
甲 天蓬星 癸 生門 直符 七赤金星 | 丙 天冲星 甲 休門 螣蛇 九紫火星 飛鳥跌穴 | 丁 天任星 丙 開門 太陰 五黄土星 丁奇入墓 |
※上が南、下が北
流派別 吉方位
流派 | 吉方位 |
---|---|
九星気学 本命星:二黒土星 | 南、北東 |
奇門遁甲❶ (採点判断) | 北東、北西 |
奇門遁甲➋ (格判断) | 北 |
奇門遁甲❸ (易卦判断) | 東 |
結果を見ると、吉方位が完全に一致する流派はなく、各流派がそれぞれ異なる方位を吉方位として選んでいます。
具体的には、九星気学は「南」、奇門遁甲❶(採点判断)は「北西」、奇門遁甲❷(格判断)は「北」、奇門遁甲❸(易卦判断)は「東」を吉方位としています。
このように、流派によって吉方位の判断は大きく異なることが分かります。
九星気学の吉凶判断方法
九星気学は、九宮を基に吉凶を判断する日本固有の方位術です。
流派はありますが、根幹となる部分は基本的に同じです。
吉方位
吉方位とは、自分の本命星、月命星に相生比和する九宮の回った方位をいいます。
本命星と月命星の両方で相生比和になる方位を吉方位とするのが一般的です。
本命 | 月命星 | 吉方位となる九宮 |
---|---|---|
一白 水星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 六白金星 七赤金星 三碧木星 四緑木星 六白金星 七赤金星 四緑木星 三碧木星 六白金星 七赤金星 七赤金星 六白金星 六白金星 七赤金星 三碧木星 四緑木星 |
二黒 土星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 六白金星 七赤金星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 九紫火星 九紫火星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 七赤金星 八白土星 六白金星 八白土星 六白金星 七赤金星 九紫火星 八白土星 |
三碧 木星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 四緑木星 九紫火星 一白水星 四緑木星 九紫火星 一白水星 九紫火星 九紫火星 一白水星 一白水星 九紫火星 四緑木星 |
四緑 木星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 三碧木星 九紫火星 一白水星 九紫火星 一白水星 三碧木星 九紫火星 九紫火星 一白水星 一白水星 九紫火星 三碧木星 |
五黄 土星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 六白金星 七赤金星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 九紫火星 九紫火星 二黒土星 六白金星 七赤金星 八白土星 二黒土星 七赤金星 八白土星 二黒土星 六白金星 八白土星 九紫火星 二黒土星 六白金星 七赤金星 九紫火星 二黒土星 八白土星 |
本命 | 月命 | 吉方位となる九宮 |
---|---|---|
六白 金星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 七赤金星 七赤金星 八白土星 一白水星 一白水星 二黒土星 七赤金星 八白土星 一白水星 二黒土星 七赤金星 八白土星 一白水星 二黒土星 八白土星 二黒土星 七赤金星 二黒土星 八白土星 |
七赤 金星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 六白金星 六白金星 八白土星 一白水星 一白水星 二黒土星 六白金星 八白土星 一白水星 二黒土星 八白土星 一白水星 二黒土星 六白金星 八白土星 二黒土星 六白金星 二黒土星 八白土星 |
八白 土星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 六白金星 七赤金星 六白金星 七赤金星 九紫火星 九紫火星 九紫火星 二黒土星 六白金星 七赤金星 二黒土星 七赤金星 二黒土星 六白金星 二黒土星 六白金星 七赤金星 九紫火星 二黒土星 |
九紫 火星 | 一白水星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 五黄土星 六白金星 七赤金星 八白土星 九紫火星 | 三碧木星 四緑木星 八白土星 四緑木星 三碧木星 二黒土星 八白土星 二黒土星 八白土星 二黒土星 八白土星 二黒土星 二黒土星 三碧木星 四緑木星 八白土星 |
凶方位
五黄殺、暗剣殺、破(歳破、月破)、常位対冲、本命殺、本命的殺の方位を六大凶殺とよび、凶方位とみます。
奇門遁甲の吉凶判断方法
奇門遁甲は、八門、八神、九星、九宮、十干という5つの要素を基に吉凶を判断する中国由来の方位術です。多くの流派があります。
採点判断の流派❶
構成要素を採点し合計点で、吉方位、凶方位を判断します。
1)総点を100点とし、それを八門、八神、九星、十干の四構成要素にそれぞれ配点する。
2)各構成要素の個別要素が吉であれば配点分を加算し、四構成要素の合計点を計算する。
3)合計点が60点以上で吉方位、それ未満は凶方位と判断するのが一般的。
構成要素 | 吉 | 凶 |
---|---|---|
八門 | 休門、生門、開門 | 景門(半吉)、傷門、杜門、死門、驚門 |
八神 | 直符、太陰、六合、九天、(九地) | 螣蛇、勾陳、朱雀(九地) |
九星 | 天輔星、天心星、天任星、(天冲星)(天禽星) | 天蓬星、天苪星、天英星、(天冲星)(天禽星) |
九宮 | ー | 五黄土星、暗剣殺となる九宮 |
十干 | 三奇(乙、丙、丁) | 六儀(戊、己、庚、辛、壬、癸) |
構成要素の配置方法」、「構成要素の採点判断方法」については、外部サイト「現代風水会」奇門遁甲で詳しく解説されているので、そちらをご覧ください。
格判断の流派➋
構成要素の組合せ(格という)に吉凶があり、吉格の方位を吉方位、凶格の方位を凶方位と判断します。
主な吉格、凶格は下表の通りたくさんあります。
吉格 | 凶格 |
---|---|
三奇得使(乙奇得使、丙奇得使、丁奇得使)、三奇昇殿(乙奇昇殿、丙奇昇殿、丁奇昇殿)、九遁(天遁、地遁、人遁、雲遁、風遁、龍遁、虎遁、神遁、鬼遁)、五假(天假、地假、人假、神假、鬼假)、三詐(真詐、休詐、重詐)、青龍返首、飛鳥跌穴、玉女守門 | 年格、月格、日格、時格、刑格、戦格、小格、大格、伏宮格、飛宮格、五不遇時、三奇入墓、六儀撃刑、天羅、地網、伏吟、反吟、門迫、青龍逃走、白虎猖狂、螣蛇妖嬌、朱雀投江、熒惑入白、太白入熒 |
易卦判断の流派❸
九宮を基にした「挨星法」、「九星と八門の配置の組合せ」などで六十四卦を割り出し、吉卦は吉方位、凶卦は凶方位と判断します。
なお、「六十四卦の割り出し方」や「六十四卦の解釈」は、各流派の奥秘になっています。
「挨星法」「六十四卦の解釈」については、外部サイト「現代風水会」奇門遁甲で詳しく解説されているので、そちらをご覧ください。
盤珪流奇門遁甲は❸の流派に属します。
その吉凶判断方法は、次の通りです。
流派の吉凶判断方法のまとめ
流派別の吉方位、凶方位をまとめると、下表の通りとなります。
流派 | 吉方位 | 凶方位 |
---|---|---|
九星気学 | 本命星、月命星と相生比和する九宮が回った方位 | 五黄殺、暗剣殺、破、定位対冲、本命殺、本命的殺の方位 |
奇門遁甲❶(採点) | 構成要素を個別採点、 60点以上の方位 | 構成要素を個別採点、 60点未満の方位 |
奇門遁甲➋(格) | 吉格のある方位 | 凶格のある方位 |
奇門遁甲❸(易卦) | 吉卦の方位 | 凶卦の方位 |
どの流派を選べばよいか
流派によって吉方位や凶方位の判定が異なることが分かりましたが、どれが正しいのかという疑問が出てきます。
方位鑑定士に相談しても、それぞれが自分の占術が正しいと主張するでしょうから、答えを見つけるのは簡単ではありません。
私の結論としては、次のようになります。
由緒ある伝統的な流派だからといって、必ずしもその流派が真実を伝えているとは限りません。
唯一信頼できる基準は、多くの実例を通じて、方位の吉凶を正しく判断できるかどうかです。
そういった確かな実績を持つ方位術を使う占術者を見つけることが、最も確実な方法だと言えるでしょう。
方位鑑定士
盤珪(ばんけい)
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