「これからの運勢はどうなる?」「大事な決断をする前に何か指針が欲しい…」そう感じたとき、易占いはあなたの強力な味方になります。
易は、古代中国から数千年もの時を超えて伝わる深遠な占術です。
人生の岐路に立つ私たちに、迷いを断ち切り、正しい道を選ぶための「知恵の羅針盤」を与えてくれます。
「難しそう」「複雑で挫折しそう…」と敬遠されがちな易ですが、実は初心者の方でも、基本をしっかり押さえれば誰でも簡単に学ぶことができ、すぐに実践できる占いです。
この記事では、易占いの基本用語から、八卦・六十四卦の覚え方、具体的な占いの立て方(立卦)、そして最も難しいとされる易卦の解釈方法まで、初心者の方がスムーズに易の世界に入り込み、実際に占いを試せるよう、分かりやすく徹底解説していきます!
易占いを始める前に知るべき「基本用語」
まずは、易占いの仕組みを理解するために欠かせない、基本的な専門用語を学びましょう。これらの用語は、易のメッセージを読み解く上での土台となります。
爻
爻とは、易の卦を構成する最も基本的な記号で、以下の2種類があります。
陽爻 :実線「ー」で表され、積極性や強さ、進展などを象徴します。
陰爻 :破線「- -」で表され、受容性や柔軟性、停滞などを象徴します。
この陰と陽の組み合わせが、易占いのメッセージを作り出します。
八卦:易の基本象徴
八卦 とは、三つの爻(陰爻と陽爻)を組み合わせてできた八つの基本的な形を指します。それぞれが自然現象や家族、身体の部位など、固有の象徴(象意)を持っています。
八卦 | ☰ | ☱ | ☲ | ☳ | ☴ | ☵ | ☶ | ☷ |
卦象 | 天 | 沢 | 火 | 雷 | 風 | 水 | 山 | 地 |
卦名 | 乾 | 兌 | 離 | 震 | 巽 | 坎 | 艮 | 坤 |
六十四卦
六十四卦は、上記の八卦を上下に重ね合わせることで作られる、64種類の複雑な卦のことです。
一つひとつの卦が、特定の状況や運勢、人生のテーマを示しており、易占いにおいて具体的な指針となる最も重要な要素です。
「上卦」または「外卦」:
上に位置する八卦。外側の状況や変化、未来の傾向を示します。
「下卦」または「内卦」:下に位置する八卦。内側の状況や現在の基盤、自身の状態を示します。
八卦の覚え方:シンプルなイメージで直感的に理解しよう!
八卦はそれぞれが特徴的な意味を持つため、初心者の方でも直感的に理解しやすいイメージで覚えることが、易占いをスムーズに学ぶコツです。
天(☰)
三本の実線で、八卦の中で最も線が少ない形。
象徴する人物は、王様や社長などのトップ層です。
王様は「尊く」、「剛健」で人々に「施し」ながら「統治」します。
地(☷)
三本の破線(線は合計六本)、八卦の中で最も線が多い形。
象徴するのは、多数を占める民衆や社員です。
民衆は「卑しく」、王様に「順い」、施す役割は担いません「吝」。
雷(☳)
一番下の爻が陽爻で残りが陰爻。陽爻が最初に現われる形。
人で言えば長男に当たり、山登りの最初の一歩(「進む」・「動く」)を象徴します。
また「足音」が響き、人々を「驚」かせるような「騒がしさ」を含みます。
水(☵)
真ん中の爻が陽爻で、上下が陰爻。唯一の陽爻がある形です。
人であれば、2番目の中男(次男)。
陽爻は、穴に落ち込んでいる状態(陥る)を表し、山登りの途中で「トラブル」が発生し、進むべきか引き返すべきか「迷う」「悩む」状況を象徴。
山(☶)
一番上の爻が陽爻で、残りが陰爻。
人では3番目の少男(三男)。
陽爻が山頂まで登りきり、そこで「止」まっている状態を表します。行き詰まりなので、引き返すなどやがて「変化」が訪れるという易の理が含まれています。
風(☴)
一番下の爻が陰爻で、残りが陽爻。
人では長女、陰爻が「入口」に見える形。
陰爻は、上の陽爻の男性に「随う」姿を表し、恋愛の意味も持ちます。
火(☲)
真ん中の爻が陰爻で、上下が陽爻。
人では中女(次女)、中央の陰爻が上下の陽爻と結びついた(離合)状態を表します。
また火を連想させることから、「明るい」や「麗しい」という意味も含まれます。
沢(☱)
一番上の爻が咽喉で、残りが陽爻。
人では少女、陰爻が「出口」に見える形、横から見ると「口」に見えます。
陰爻の女性が下の陽爻の男性から言い寄られるという「喜び」の意味も持っています。
八卦 | ☰ | ☱ | ☲ | ☳ | ☴ | ☵ | ☶ | ☷ |
卦象 | 天 | 沢 | 火 | 雷 | 風 | 水 | 山 | 地 |
人 | 父 社長 | 少女 | 中女 | 長男 | 長女 | 中男 | 少男 | 母 社員 |
象意 | 健,剛 尊,施 | 喜悦 出,口 | 離合 明,麗 | 動,進 騒,驚 | 入 随う | 陥,悩 | 止 変化 | 順 吝,卑 |
易卦を立てる方法(立卦):あなたの疑問を形にするプロセス
易占いでは、質問に対する答えを得るために「卦を立てる」ことを立卦といいます。
立卦には、主に有筮立卦と無筮立卦の二つの方法があります。
有筮立卦:道具を使った伝統的な方法
有筮立卦とは、筮竹やサイコロ、コイン、カードなどの道具を使用して卦を立てる方法です。
古典的で伝統的な易占いのやり方であり、特に筮竹を使う方式が最も一般的ですが、手間がかかるため初心者には敷居が高いと感じるかもしれません。
メリット
直感的な要素が強く、結果に神秘性を感じやすい。
デメリット
同じことを占っても結果が異なる場合があり、道具の準備や操作に慣れが必要です。日本人にはこの方法を好む人が多い傾向にあります。
無筮立卦:道具を使わない実践的な方法
無筮立卦とは、筮竹などの道具を使わず、特定の法則や考え方に基づいて卦を立てる方法です。時間や数字、方位など、身の回りにある情報を卦に変換します。
メリット
道具が不要で手軽。同じ方法で卦を立てれば同じ結果になるため、再現性があります。
デメリット
卦の方法が多岐にわたるため、どの方法を使うかによって結果が異なる場合があります。中国ではこの無筮立卦が一般的で、その中でも梅花心易が広く用いられています。
初心者におすすめ!具体的な立卦方法
有筮立卦を気軽に試す方法
伝統的な有筮立卦を、もっと手軽に試したい初心者の方には、以下の方法がおすすめです。
易用サイコロ
易占い専用のサイコロ(上卦用、下卦用、変爻用など)を使い、同時に振るか、一つずつ振るかで卦を立てます。手軽に卦を出すことができます。
イーチンタロットカード
最も初心者におすすめの方法です。64枚のカードから1枚を引いて六十四卦を出し、その後、普通のサイコロなどを一度振って変爻を決めます。
イーチンタロットカードは、六十四卦の内容を視覚的に捉えやすい絵柄が多く、絵柄を見ることである程度直感的に解釈できるため、易の学習を深めるのに非常に役立ちます。
また、多様な絵柄があり、コレクションする楽しみもあります
無筮立卦の代表例:梅花心易の基本プロセス
無筮立卦の代表格である梅花心易は、身の回りの事象から瞬時に卦を立てる実践的な占術です。ここでは、その基本的な考え方と、具体的な立卦方法をいくつかご紹介します。
梅花心易の基本ルール
時間を数値に変換
十二支の時間を次のように数値化する。
十二支 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
方位を八卦に対応
方位を八卦に対応させる。
方 位 | 北 西 | 西 | 南 | 東 | 南 東 | 北 | 北 東 | 南 西 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
八卦 | 天 | 沢 | 火 | 雷 | 風 | 水 | 山 | 地 |
卦(八卦)の決め方
合計数を8で割り、余りを使って八卦を決定
余りの数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
八卦 | 天 | 沢 | 火 | 雷 | 風 | 水 | 山 | 地 |
変爻の決め方
合計数を6で割り、余りを使って変爻を決定。
余りの数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
変 爻 | 初爻 | 2爻 | 3爻 | 4爻 | 5爻 | 上爻 |
梅花心易を使った具体的な立卦方法の例
特定の年月日と時刻を合計し、上記のルールに従って上卦・下卦・変爻を決定します。
🔍 例)2021年12月26日 午前10時30分に、若い女性3人が東の方角からやってきた。
時間を基に立卦する(新暦バージョン)
📝 計算手順
年月日を合計する
年支数(丑年):2
月(12月):12
日(26日):26
合計 → 2+12+26=40(①)
時刻を加える
時支数(巳刻):6
合計 → 2+12+26+6=46(②)
上卦 → 40 ÷ 8 = 5(余り 0 → 地 ☷)
下卦 → 46 ÷ 8 = 5(余り 6 → 水 ☵)
変爻 → 46 ÷ 6 = 7(余り 4 → 4爻変)
🔮 結果:地水師(4爻変)
時間を基に立卦する(旧暦バージョン)
📝 計算手順
旧暦で計算(11月23日)
年支数(丑年):2
月(旧暦11月):11
日(旧暦23日):23
合計 → 2+11+23=36(①)
時刻を加える
時支数(巳刻):6
合計 → 2+11+23+6=42(②)
上卦 → 36 ÷ 8 = 4(余り 4 → 雷 ☳)
下卦 → 42 ÷ 8 = 5(余り 2 → 沢 ☱)
変爻 → 42 ÷ 6 = 7(余り 0 → 上爻変)
🔮 結果:雷沢帰妹(上爻変)
時計の針を使って立卦する
📝 計算手順
時針を八卦に変換
10時 → 風(☴)
分針を八卦に変換
30分 → 水(☵)
針 位置 | 11-1 | 1-2 | 2-4 | 4-5 | 5-7 | 7-8 | 8-10 | 10-11 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
八卦 | 火 | 坤 | 沢 | 天 | 水 | 山 | 雷 | 風 |
変爻を決める
分針の位置(6)→ 3爻
分針位置 | 1-3 | 3-5 | 5-7 | 7-9 | 9-11 | 11-1 |
---|---|---|---|---|---|---|
変爻 | 初爻 | 2爻 | 3爻 | 4爻 | 5爻 | 6爻 |
🔮 結果:風水渙(3爻変)
占いたい内容(占的)と方位を使って立卦する
📝 計算手順
占的を八卦に変換(若い女性=沢 ☱)
方位を八卦に変換(東=雷 ☳)
変爻の決定
沢(2)+ 雷(4)=6
6 ÷ 6 = 0(余り 0 → 上爻変)
🔮 結果:沢雷随(上爻変)
梅花心易は、これらの方法を用いて、目に見える事象から宇宙のメッセージを読み解くことができます。
易卦の「解釈」を学ぶ:初心者でも実践できる易の読み解き方
易の基礎知識を覚え、立卦することは比較的簡単ですが、多くの人が挫折しやすいのが易卦の解釈です。一般的に「周易」や「断易/五行易」が用いられますが、前者は「易経」の深い解釈が難解であり、後者はルールが複雑であるため、満足のいく水準に達するには相当な時間と努力が必要です。
しかし、ご安心ください。
数多くの実例データに基づいた、誰でも簡単にできる解釈方法があります。
それは、卦の「象意」や「卦の形」からメッセージを連想していく方法です。
以下に具体例を挙げて解説します。
意から連想する方法:卦が持つ意味を紐解く
ガスの八卦?
ガスは空気の一種なので、「風(☴)」や「天(☰)」を連想しやすいです。
流れるガス → 風(☴)
部屋に充満するガス → 天(☰)(「満ちる・充実」の象意)
また、ガスは目に見えないため、「暗い・見えない」の象意を持つ「水(☵)」で見ることもあります。
※火(☲)は「明るい」象意ですが、その逆の水(☵)は「暗い」象意を持ちます。
火事の象意がある六十四卦は?
- 風火家人(上卦:風 ☴、下卦:火 ☲)
易では「下から上へ進む」のが基本です。風(☴)には「入る」という象意があり、一番下の陰爻から何かが入ってくることを示します。
その「何か」は下卦の火であり、これが火事の象意につながります。
特に、自分の家が火元ではなく、隣家が火元であることが多いとされます。 - 火水未済(上卦:火 ☲、下卦:水 ☵)
火(☲)は上へ上り、水(☵)は下へ流れる。この配置では水が火に届かず、消火が難航することを意味し、火事の象意を持ちます。
恋愛相談の「沢地萃たくちすい」
「沢」と「地」はどちらも女性を象徴するため、相談者と相手のどちらがどの八卦に当てはまるかを見分ける必要があります。
沢(☱)の象意: 「口・おしゃべり・告白する側・恋愛上手」
地(☷)の象意: 「控えめ・地味・相手に従うタイプ」
これらの象意をもとに、どちらが積極的で、どちらが受動的かなどを判断します。
「雷水解らいすいかい」と「水雷屯すいらいちゅん」
水雷屯
水(☵)の象意:「陥る・悩む」
雷(☳)の象意:「進む」
易では下卦(基盤)から上卦へ進むと考えます。
この卦では、進む先に「悩み」があるため、「進むと凶」「進むと困難に陥る」と解釈されます。
雷水解
雷水解は 水雷屯の上下が逆転 した形です。
水(☵)が下にあり、雷(☳)が上にあるため、これは悩みを乗り越え、問題が解決することを意味します。
卦の形から連想する方法:視覚的なイメージで読み解く
卦の視覚的な形や配置から、メッセージを連想していきます。
自転車の八卦は
自転車を横から見ると、下に2つの車輪がある形が特徴です。
風(☴): 「股の象意」があり、自転車をこぐ動作に合うため、基本的に風(☴)と見ます。
山(☶): 「止まる」象意があるため、信号待ちの自転車は山(☶)と見るのが的中しやすいです。
恋愛の「天風姤てんぷうこう」
この卦は、初爻のみ陰爻で、他はすべて陽爻という特徴的な形をしています。
陽爻=男性、陰爻=女性と見立てた場合、易は下から上へ進むため、初爻の女性が多くの男性と関わる象意を持つと解釈できます。
「女壮(おんなさか)んなり、もって女を娶(めと)るなかれ」という「易経」の解釈もあり、女性が強すぎる、あるいは複数の男性との関係を示唆する状態を表します。

地沢臨
初爻と二爻が陽爻であり、陽爻が徐々に増えていく形です。
これは「少しずつ発展し、良い方向へ向かう」という象意を示します。
また、初爻と二爻、三爻と四爻、五爻と上爻をまとめると「大震(雷)」の形に近いと見ることもできます。その場合、雷の象意が強まり、「大きく進む」「評判になる」「驚く出来事がある」ことを示すと解釈されます。

易占いの「勘」を磨くためのアドバイス
易の基礎知識と立卦、解釈の基本を学んだら、あとは実践あるのみです。解釈の精度を高めるためには、以下のトレーニングをお勧めします。
❶ 頭に浮かんだ単語を卦に連想する
「怒る」「盗む」「成功」「失敗」など、日常で目にする単語や感情が、どの八卦や六十四卦で表されるのかを常に連想する訓練をしましょう。
➋易卦と実際の事象を比較し、なぜそうなったのかを考察する
実際に占った結果と、その後の現実の出来事を照らし合わせ、「なぜこの卦が出たのか」「どのように解釈すればよかったのか」を深く考察することで、あなたの易の「勘」は格段に磨かれます。
【筆者の視点】盤珪流奇門遁甲における易の活用法
筆者(方位鑑定士ばんけい)は、独自の盤珪流奇門遁甲という方位術を活用して方位の吉凶を判断する際に、六十四卦を複数通り出して複合的に判断しています。その解釈は、まさに上記で解説した象意や卦の形から連想する方法を実践しています。この実践的な解釈法こそが、複雑な易の知識を現実の問題解決に活かす鍵となるのです。
本記事の参考文献です。
1.易経関連~「易」(本田濟著、朝日選書)
2.梅花心易~「訳注 梅花心易」(薮田曜山著、三密堂書店)
3.易全般 ~「易学小筌」(松田定象著、神宮館)、
~「運勢大事典 易占編」(柳下尚範、国書刊行会)